生産者

常滑を一望できるワイナリー

2020.12.05
 「農家レストラン」や「6次産業」など、常滑市にはそんな最新キーワードであふれる先進的な取組みを実行している事業者がいる。その中でもアメリカンテイストで常滑の魅力を発信している事業者と言えば、知多半島初のワイナリーである「常滑ワイナリー ネイバーフッド」を経営する馬場憲之さん。小高い丘の上なので見晴らしが良く、セントレアから飛び立つ飛行機と共に常滑の海が一望でき、そして夕日が沈む頃には一面がオレンジに染まり幻想的な風景を作り出す。そんな常滑の中でも特に美しい景色が望める絶好のロケーションで育つぶどうと、そんなぶどうから作られるワインができるまでの秘密に迫ってみよう。
 
 
 
― 馬場さんのつくる「TOKONAME WINE」への道
 
 ワインをつくることは、まずはぶどうづくりから始まる。ぶどうの乾燥した地域に生息していた植物と言われており、地面に深く根を生やし、地中深くから水をくみ上げ果実として実をつける、いわば天然の給水ポンプの役割をして地上の生物に潤いを与えてきた。一方常滑は水分を吸収しにくい粘土質な土壌が多く、あまりぶどうの生産が活発な地域ではなかった。そんな好条件とは言えない環境だと言うことは、ワインを造りたいと考えてから様々なワイン造りの現場に赴き、経験を積んだ馬場さんももちろん理解していた。それでも常滑でワイン造りを目指すのには、もちろん理由があった。
 証券会社を退職した馬場さんは、まずは空港に関わる事業を立ち上げ独立のスタートをきるが、その後アメリカ同時テロに直面し、BtoCのサービスをすべきだと考えた。それから様々なスタイルの飲食事業に取り組むもなかなかうまくいかず、苦しい日々を過ごしていた。そんな中、もともと好きで訪れていたアメリカであるヒントを得る。それは、日本では見かけたことのない観光農園という生産地で提供するエンターテイメントだった。さっそく日本で実現させようと考えた馬場さんだったが、思いの外アメリカと日本のルールの違いは多く、実現は困難に思えた。それでも諦めず、とにかく自分の意思をあらゆる方法で様々な人たちにぶつけることによって、ついに観光と農業を繋げた事業に乗り出すことに成功した。常滑の素晴らしいロケーションを武器にすれば、きっとアメリカにも負けないコンテンツができあがると考えた馬場さんは、オレゴン州のワイナリーにヒントを得る。ワイン以前に、まずはぶどうづくりすら難しいと思われる状況ではあったが、現在では多くのぶどうが実っており、沢山の「常滑生まれのワイン」を造ることができるようになった。
 馬場さんがアメリカで見てから始まった夢が、徐々に現実のものとなってきている。それが、常滑の夕日を眺めながら贅沢な時間が楽しめるレストラン「Sunset Walker Hill」や、そんなレストランで乾杯するワインを製造する「Tokoname Winery Neighborhood」
だ。
 
 
 
― ワインをつくる
 
 ぶどうを収穫した後、まず始めるのは枝と実をわける除梗(じょこう)を行う。どのぶどうも必ず行う作業としてはここまでで、これから先は、それぞれぶどうなどの特性を活かしたワイン造りのために工程がわかれる。馬場さんのワイナリーでは、除梗破砕を終えた白ぶどうはBucher(ブーハー)という機械を使い、もれなく果汁を搾る作業を行う。しかし、主に赤ワインの原料となるぶどうはBucherを使わない。果汁と果皮を完全にわけず、一緒にタンクに入れてしまうのだ。その理由は果汁の色を活かす必要があるから。あの、赤ワインの美しい色は、果皮の色を活かしているのだ。しかし、そこからは自然の力に頼る部分が大きくなる。酵母が糖を食べてアルコールと二酸化炭素をつくりだしワインは出来上がってくるのだが、もちろんその間も不必要なバクテリア等の抑制などのために、世話を続けなければならい。そうして常滑のぶどうのワインは出来上がるのだ。
 
 
 
― ワインは究極の地酒
 
 馬場さんは、ワインを究極の地酒だと考えている。例えば、穀物は乾燥させることで遠い地でも消費することができるので、例えば知多半島で育った酒米を他地域で仕込んで酒を造ることは可能で、逆に他地域で育った米を知多半島で仕込むこともできる。しかし、ぶどうは米のように簡単に保存や運搬をすることができない。だからこそ、ワインはその場で採れるぶどうで造られているし、だからこそフランスで言われるテロワールを体現している飲み物と言える。
 
 ― TOKONAME WINEの特徴
 
 常滑が今までぶどうの産地で無かったのには、常滑の土質もひとつの理由だと考えられる。しかし、いざ馬場さんがチャレンジしてみると、常滑の強い粘土質な土は、ぶどうにある一定のストレスをかけるので、逆にワインが美味しくなると言うことがわかってきた。そしてピノ・ノワールという品種は土の色も反映されることもわかった。常滑焼でも見られる「朱泥の色」がワインにも反映されるのならば、まさに常滑の空気や水や気候だけでなく土の色すらも表現された、まさに常滑ならではのワインが造られていることになる。
 常滑の特長を活かしたワイン造りにおいて、馬場さんは更なる特徴を与えようと考えていた。そして見つけたのが「アンフォラ」というキーワードだった。遙か昔、ワインを甕(かめ)で造っていた時代があり、それを常滑焼で再現しようと考えたのだ。もちろん常滑焼の職人にとっても未知の世界で、様々な試行錯誤を繰り返し、ついに2020年に甕すらも常滑でつくられた究極の地産地消ワインが完成した。
 
 
 
 
― アメリカと農業と常滑とワイン
 
 常滑の魅力を伝えるコンテンツを考え、そして形にしてきた馬場さん。醸造家としてだけでなく、経営者としても業界から注目され、様々なメディアにも露出しているのでますます多くの人を惹き付け続けている。そんな馬場さんの活躍する現場で、常滑の魅力を体感できる体験ツアーは誰でも参加可能となっている。ワインを飲む前に、一度Tokoname Winery Neighborhoodの魅力を自分の五感を使って体験してみてはいかがだろうか。

詳 細

常滑ワイナリー ネイバーフッド

住所 愛知県常滑市金山上白田129-2
TEL 0569-47-9478
WEB https://www.veraison.info/


ツアー詳細
    • 日時
    • 持ち物
    • 集合場所
    Copyright 2020 とこなめ農泊観光推進協議会

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